第十二回 粗利額の向上

 売上における比較優位の製品群の比重を高める(営業活動の優先順位見直し)だけで粗利額の向上を図ることができるが、これは現状の延長上の話である。このままでは、あまりに芸がない。粗利額を向上させるための対策が求められる。

 

 粗利額向上の方法として、販売単価の値上げ、外部支払費用の削減に分かれる。外部支払費用の削減として、内製化率の向上、外注単価の削減、部資材費の削減がある。優先順位として

  • 内製化率の向上
  • 部資材費の削減
  • 外注単価の削減
  • 販売単価の値上げ

 

 内製化率の向上について考えてみる。外注化の目的として以下の内容が考えられる。

  • 内部工数不足の補填(業績拡大時のバッファー)

 無駄な外注化の削減、極力内部リソースを活用して固定費の回収を図る。

  • 社内にない技術・技能等の利用

 内製化するには、人材確保(育成)、設備投資など資金と時間がかかり得策でない。しかし、工程を見直せば、全ての外注化ではなく一部工程の内製化への移行を検討し、外注費削減を図る。長期的には外注の技術・技能の社内への取り込みを考えた方が良い。

 内製化率の向上は、外注工程の見直しがポイントとなる。

 

 部資材費の削減については、スケールメリット(大量発注)によるコストダウンが一般的で、他社との共同発注による対応が考えられる。部資材単価の削減もあるが、購買先との価格交渉になり難航が予想される。また、より廉価部資材への変更も考えられるが、顧客の承認、評価等の手間がかかりこともあり、安易な取り組み要注意である。

 

 外注単価の削減も外注先との価格交渉又はより外注単価の低い外注先への変更があるが、外注先に光るものがあれば、長い目で見て得策とは言えない場合もあり注意を要する。外注単価の削減とは次元が異なるが、外注先にある技術・技能の取り込みを考えるのも長期的には重要である。なぜなら、QCに代表されるような改善よりはるかに効果があり、かつ、長期にわたる有効性が期待できるからである。

 

 販売単価の値上げは、顧客が認める可能性が低く、また、発注停止のリスクもあり、お奨めはできない。現状では、コストダウン効果による販売単が引き下げで新たな受注獲得を目指しているのが現状である。

 

 最優先は、最も費用対効果のある内製化率の向上に伴う固定費の回収であろう。顧客又は過去とのしがらみで外注への従来の発注を継続していればこのコロナ禍で生き残ることは難しい。嘘も方便である。内製化率を高めれば外注への発注削減となるが、コロナ禍での売り上げ減少に伴う発注減としておけば良い。