第十六回 スキル評価

スキル管理については、業種・業態によって大きく異なります。基準を明確にしないと混乱を来す要因ともなりますので、このブログのスキル管理を製造業に絞りたいと思います。

昨今、IT系を含めたサービス業の比重が高まっていますが(筆者もその一員ですが)、やはり産業の核は製造業で、製造業の復権が重要と考えるからです。製造業は長年のノウハウの蓄積が強みとなることは事実で、「ノウハウ(技術・技能)の承継」が喫緊の課題と言われて久しいのですが、遅々として進展が見られません。その課題解決のヒントになればと思います。

 

ここで、前回のスキル採用から個々でスキルの特性を分類について考えてみます。

アナログ的とデジタル的で分類すると

  • アナログ的な要素の強いスキル(擦り合わせ技術、技能など)
  • アナログ的要素とデジタル的要素の組み合わせ
  • 専門性に特化したデジタル的スキル

と考えられます。

 

デジタル的なスキルは高度な専門教育の要素が強く、ノウハウの承継には馴染まないと思われます。

製造業では、アナログ的な蓄積が要求される擦り合わせノウハウが重要になります。かつて日本の製造業の強みでしたが、今では怪しい状況です。

このブログの製造業では、このアナログ的スキルを対象に考えたいと思います。

 

まず、スキル管理は何を管理するのでしょう。

当然、スキルになりますが、スキルの何を管理するのでしょうか。

  • スキルの区分(コンセプチャル・テクニカル・ヒューマン)
  • スキルの特性(アナログ的・デジタル的)
  • スキルの特定
  • スキルの定義(内容)
  • 各個人(従業者)の教育・訓練記録、業務経験記録
  • 各個人(従業者)のスキル評価

といった内容が挙げられることが多いようです。

 

スキル管理で、要員に対するスキルの評価は重視されていますが、スキルそのものの評価について言及している事例はほとんど見当たりません。スキルを評価しなければ、どのような研修を実施するのかも明確にならないと思います。昨今のリスキニングについても、多くの研修メニューが用意されますが、DX関連の研修をかき集めた感がするのは筆者だけでしょうか。

 

ここで、混乱を避けるために

  • 保有スキル評価:各個人(従業者)の保有するスキル内容、レベルを評価
  • 個別スキル評価:個々のスキルそのものの評価、妥当性判断材料

と定義することにします。

 

現状のスキル評価は、「保有スキル評価」と理解されることが大半です。今回のスキル評価は、「保有スキル評価」ではなく、ほとんど注目されることのない「個別スキル評価」について考えたいと思います。

 

以前、スキルマッチングについて言及しましたが、これも正確な「個別スキル評価」がなければ判断を誤る可能性があります。

 

ここで「個別スキル評価」の目的として、次の内容が考えられます。

  • 個々のスキルの把握

スキルの具体的な内容、難易度等を明確化して把握することで基礎資料として整備します。

  • スキルの妥当性評価

明確化したスキルを業務への重要度、事業動向(陳腐化の有無)等により妥当性を評価します。

  • スキル承継マッチング評価

スキル承継に必要な継承者のスキルレベル等を明確にして、教育・訓練の対象の適切性を確保します。

  • スキル事業マッチング評価

新製品や新規事業等のマッチングを評価することでスキルの必要性(陳腐化レベル)を検討します。

 

「個別スキル評価」の評価項目として、次の内容が考えられます。

 

1.静的評価(スキルコンテンツ評価)

  • スキル重要度(共有スキル、専門スキル、必要度、貢献度、事業整合性)
  • スキル難易度(知識難易度、技能難易度)
  • スキル承継条件(基礎知識、習得済スキル、業務経験):伝承者及び継承者が対象
  • 暗黙知言語化が難しい知識、言語化できない知識(無意識))

 

2.動的評価(スキル時系列評価)

  • スキル変遷(普遍性、難易度、将来性、陳腐化度)
  • スキル新規性(新製品、新事業)
  • 資格(新製品、新事業、法規制)

 

スキル評価もあまり細部にこだわると本質を見失いことになりますので、組織ごとに評価目的を設定して評価項目を検討する必要があります。

 

スキル評価は、スキルの優劣を決めるものではありません。あくまでスキル承継プロセスにおける優先順位付け、伝承者及び継承者の選定の指針として円滑な承継を意図するものです。

 

次回から個々のテーマについて考えていきます。

 

2023年04月30日