第七回 工場シェアの活用法

第七回 工場シェアの活用法

昨今のコロナ禍において、工場シェアが加速しているようです。工場の余力を分かち合って稼働率を向上させて受注拡大に繋げようとする試みです。通常は、製造を委託する大手企業と稼働率を向上させたい企業とのマッチングを仲介するサービスを活用します。コロナ禍において全ての企業の業績が低迷したわけではありません。巣ごもり需要で好調な企業もあり、マッチングの重要性は高まっています。この工場シェアですが、製品や設備の特性のみのマッチングが主流となっていますが、前回指摘した「比較優位」の視点を持っていません。その必要性についての認識もないのかもしれませんが・・・。

 

工場シェアにおいて、国内工場の手薄な大手企業、工場シェアにより受託する企業、各々「国」と考えて国際貿易(グローバリゼーション)の基本である「比較優位説」を導入することも一案であると考えています。今回のコロナ禍において過度なグローバリゼーションが傷口を広げたとの指摘もありますが、「比較優位説」が世界経済の成長に重要な役割を果たしたこともまた事実です。経済が縮小しつつある現在、経済規模を拡大(成長)する「比較優位説」を自社のクローズド(閉じた)サプライチェーンに限定して効果を薄めるより、工場シェアによるにオープン(開いた)サプライチェーンを活用して、より経済規模の拡大を図り、一早くコロナ禍の濁流から抜け出すことが重要であると思います。

 

リモートワークの定着によりコロナ後はどのような変化を起きるか予想つかないとされていますが、あくまで働きから(手法)の範疇であり、生産性向上(働き方改革)の観点からの重要性が減ずることはないものの、あくまでコストの範囲に限定されているものと考えられます。拡大(成長)のエンジンとしてはやや心もとないのではないでしょうか。

 

ESG投資に代表されるように成長の足枷となる要素は増えています。手段を択ばない成長は許されない時代となっています。特に環境問題は、重要性は誰もが認めていますが、その取組みには常にコストの問題が付きまとっているのが現実です。環境の取組みについては、コストから投資へと移行すべきとの考え方も根強くあります。コストであれば削減の対象となり、投資であればリターンが求められるのが常です。しかし、多くの企業では、自社のサプライチェーンの位置付けから「環境=コスト」とならざるを得ないのが現状です。

 

稼ぐ手段として、いきなり飛躍しても無理があります。従って、喫緊の課題としては、既存の延長線上で繋ぐしかありません。ただ単に「出来ます」で工場シェアに取組んでも差別化は図れません。「比較優位」の考え方を取り入れて付加価値を高める方法を模索することを考えて見ることも重要です。